6月6日 マイク・フラーとの出会い その1
 
     1992年頃、Hollywood -Guitar Centerまで歩いてワンブロック、というアパートに住んでいた僕は、その界隈に密集している楽器屋さんにほとんど毎日通い、ギターをヴィンテージ・アンプやエフェクターに通して弾き倒していました。
 そんなある日、僕はGuitar Centerの脇道にある「Voltage Guitar」という老舗ビンテージ・ギター・ショップの店先に、赤のスモール・ヘッドのVintage Marshall 50Wが飾られているのを発見します。“かっこいいっ!”と見ていると、お店のカウンターに座っていた人と目があったので、“これ、いくらっ!?”と聞いてみました。すると、そっけない声で“Fifteen Hundred Dollars”という返事が返ってきたので、僕は“Oh,Well”とかいって、その場は諦めて帰ったのです(因みにそのVintage MarshallはRATTのRobinが購入したそうです)。
 それからしばらくして、よく目を通していたローカルのリサイクル誌『Recycler』を読んでいると“Vintage Vox Wah for Sale”の文字が! すぐさま電話し、その持ち主が指定した住所へと足を運んでみました。僕がその家のドアをノックすると、出てきた人はなんと例の楽器屋さんの店員で“君、Hollywoodのお店で会った事あるよね!”と気さくに家に招き入れてくれました。そこで目にしたのは、そこらじゅうに転がっているFuzz Face、VOX Wah,そしてEchoplexなどの多くのヴィンテージ・エフェクターでした。Fuzz FaceとVOXはバラしてあって、興味を抱いた僕はそのあと数時間、彼とギターを弾いたりJimi Hendrixを聴いたり、Vintage Effectsについて語ったりと、とても楽しい時間を過ごしました。
そう、その彼こそがマイク・フラー(Michael Fuller)だったのです。
     
  6月19日 マイク・フラーとの出会い その2
 
     マイク・フラーと出会った当時、彼はスタジオの仕事もしていましたが、それだけでは食べていけないので、楽器屋さんで週数回アルバイトをしていました。
 彼もHollywood GITに通う為にロスに引っ越してきたのですが、在学中に人の紹介で知り合ったLarry Carltonの家で、家の修理やペンキ塗りなどをして身の回りの仕事を手伝っていたそうです。ある日、自分の録音したテープを聴きながら壁にペンキを塗っていると、たまたまそこを通ったLarryが足を止めて“これ誰の曲!?”と聞いてきたので“僕の書いた曲だよ”と答えるとLarryはしばらく聴き入って“……あとでオフィスの方へ来てくれないか”と言い残していったそう。その後、当時ツアーをしていたLarryの奥さんのバンドでギターを弾くことになったそうです。
     
  7月12日深夜 Fulltoneの誕生
 
    Octafuzzの誕生
 '92年当時、ライブで観たランドウのOctaviaサウンドにやられていた僕は、『Little Gods』というメキシカン4人組のバンドとお付き合いがあったんですが、彼らのライブを観ていると、なんとそのギタリストも同じTycobrahe-Octaviaを使っていたのです。
 ある日、そのMannyというギタリスト(現Distortion Felix)が、バンドのツアーに高価なTycobrahe-Octaviaを持ち歩きたくない、と言うので、僕はマイク・フラーを紹介し、マイクにそのコピーの製作を依頼してみたのです。Mannyは出来上がってきた、正に手作りのエフェクターを気に入り、ツアーに持って行きました。また、僕はそのデッドコピーに感激し、日本に紹介したい、ということで8個だけ製作を依頼しました(因みに、そのシリアルは 0017〜0024です)。それが日本へ紹介した初めての8つのOctafuzzで、当時、僕がロスから送るVintage Effectsを販売していただいていた渋谷にある楽器屋さんで、委託品として店頭に並び始めました。それが1994年の3月の事です。

地道に繰り返した実験と製作
 その後、Uni VibeやVox Wah、そしてFuzz Faceなどをバラして研究を重ね、まずDeja Vibe(s/n-0004)が94年10月3日に出荷されます。それが日本に紹介された最初の1台です。まだまだ完成されていない未熟な物でしたが、マイクの情熱がそそぎ込まれたオールハンドメイドのこのDeja Vibeは、それはそれは素晴らしい物でした。Deja Vibeに関しては、テスト段階で試したその音はまだまだで、マイクに“あのUni Vibe の、地を這うようなハートビートが欲しい”と言うと、彼は怒った表情をしながらもうなずいたのを覚えています。そして、その次の日の早朝には、“TAKAっ!聴いてくれよ!”とマイクが電話してきました。電話の向こうで、やや興奮気味に、ギターをDeja Vibe Proto typeに通して弾く、彼の満足げなその音色を今でも思い出します。
 話は戻りますが、同時に並行して製作されていたUltimate Octaveも遂に完成し、94年10月11日に出荷されます。また、'69 Pedalも95年1月30日に初出荷されます。95年6月16日には、これらに続いたSoul BenderとFulldriveが1台ずつ出荷されますが、95年12月20日に出荷されたFulldrive 2の発表まで、少数生産ながら、いろいろな実験と製作を地道に繰り返していました。
 そして、96年に入ると3月にSupa Trem,4月に'70 Pedalをラインアップに加え、口コミでの愛用者がアメリカでも急増し、Fulltoneの名前は世界へ広まっていきました。 当時のギター雑誌の楽器店広告を探せば、その当時のモデルの写真が載っているはずです。 
     
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